アンゴラ南西部からナミビア北西部・中西部にかけて分布する、属内最大級のブドウ科塊根植物。POWO の正名は Cyphostemma currorii (Hook.f.) Desc. で、19 世紀半ばに英国海軍軍医 Andrew Curror がアンゴラで採集した標本をもとに Cissus 属として記載された種に遡る。日本の園芸界では Welwitsch 採集系統を Descoings が 1967 年に組み替えた Cyphostemma macropus(現在は currorii のシノニム)の名で広く流通しており、本サイトでも流通名に従ってこの名で掲載するが、分類上の正しい名は currorii である。もっとも葉のうねりなどの形質は同属 uter にも通じ、かつて uter の変種として扱われた時期もあるなど、所属が二転三転してきた種でもある(詳しい経緯は特集「三つの名を生きた塊根 ― currorii・uter・macropus」で)。自生地ではブランドベルクやスピッツコッペの花崗岩インゼルベルクに根を下ろし、樹高 6m を超えることもある。黄〜橙の薄紙状の樹皮が剥がれて緑の内皮を覗かせる姿が見どころで、夏型で実生から太らせる楽しみが長い。
育て方
置き場所・日当たり
自生地はアンゴラ南西部からナミビア北部にまたがる Kaokoveld 砂漠の東縁、岩がちな東向きの斜面で、強い直射と乾いた風に晒されて育つ。生育期は屋外で終日直射に当てると、塊根が締まり樹皮の薄紙状の質感も乗りやすい。日本の真夏は午後の照り返しと蒸れの組み合わせに弱いので、遮光20〜30%と棚上での通風確保が無難。葉は薄く水分を多く含むため、台風前後の強風や長雨は鉢を移動して避ける。冬は落葉して休眠に入るので、8℃以上を保てる明るい室内窓辺へ取り込み、断水気味で乾燥越冬させる。
水やり
生育期は表土が完全に乾いてからたっぷり、しっかり乾かすメリハリで管理する。原産地は夏雨型の半乾燥気候で、過湿は塊根を一気に腐らせる。落葉後は完全断水。
用土
水はけ最優先で無機質中心。赤玉土小粒:鹿沼土小粒:軽石 = 3:3:4。本種は腐りに弱いため、軽石比率をやや上げて乾きやすく組む。深鉢で根を真下に伸ばす。
肥料・活力剤
生育期に緩効性化成肥料を植え替え時に少量、または規定の倍に薄めた液肥を月1回。与えすぎは枝が間延びし、樹皮の質感が崩れるので控えめに。
温度・冬越し
生育適温22〜35℃、最低5℃が目安。乾いていれば短時間の0℃前後にも耐えるが、湿土+10℃以下は致命的。落葉を確認してから断水で完全に乾かし、室内窓辺で越冬させる。

実生のはじめ方
種の入手先
海外: Köhres / Mesa Garden / Succseed / Unusual Seeds / Cactus Store
国内 専門店: プラントブラザーズ / SEEDSTOCK / あるびの精肉店 / 奈良多肉植物研究会
国内 マーケット: ヤフオク / メルカリ / Yahoo!ショッピング
播種前の処理
果肉付きで届くことがあれば、軽く水に浸して軟化させてから除去する。殺菌剤(ベンレート水和剤・ダコニール1000など)と活力剤(メネデール等)を使用希釈率で混ぜた液に、種子を半日程度浸ける。浮いている種は古い在庫の可能性が高く、鮮度が落ちると発芽率が大きく下がる。
用土
実生用は細粒・無菌寄り。赤玉土細粒:鹿沼土細粒:バーミキュライト = 1:1:1。立ち枯れに弱いので熱湯やレンジで事前殺菌しておく。
播種方法
覆土なし、または種子が見え隠れする程度のごく薄い覆土に留め、種子間隔は1cm以上空ける。
光・温度
明るい日陰で25〜30℃をキープ。発芽率は鮮度次第で大きく変動するが、新鮮な種なら発芽はおおむね安定する。発芽は2週間〜2ヶ月と幅があり、加温したまま気長に待つ。
水やり
鉢底から1〜2cmの腰水管理。最初の2〜3週間は乾かさないことを優先し、発芽が揃ってきたら水位を段階的に下げる。
肥料
発芽直後は不要。本葉が展開してから規定の倍以上に薄めた液肥を月1〜2回。成長は遅いので濃く与えない。
発芽後〜植え替えまで
発芽〜本葉展開
腰水継続、強光は避ける。
腰水卒業
1〜2ヶ月かけて段階的に。
初回植え替え
1〜2年目、根が回ってから。
よくある失敗
カビ・立ち枯れ
- 原因: 過湿、雑菌、果肉残り
- 予防: 用土殺菌、果肉除去、通気確保
徒長
- 原因: 光量不足
- 予防: LED距離を近づける、または屋外の明るい日陰へ。本種は元来枝分かれの多い樹形なので、初期に光を確保すると姿が早く整う
種が発芽しない
- 原因: 種の鮮度切れ、温度不足、果肉残り
- 予防: 新鮮な種、加温マットで25〜30℃維持、果肉は丁寧に除去
注意点
葉と樹液にシュウ酸(一部はラフィド状の針状結晶)を含み、皮膚や粘膜への刺激性があるため、植え替え時は手袋を着用する。果実にも毒性があり、口にしない。本種は CITES 非掲載だが、現地球の流通には輸出許可など法令遵守が前提となる。


