「万物想(ばんぶつそう)」の名でも親しまれる、南アフリカ〜ナミビア南部の冬雨地帯(ナマクアランド・クネルスフラクテ)に自生する小型の塊根性多肉。命名権威は (L.f.) Toelken、種小名 reticulatus は「網目状の」の意で、開花後も枝先に残る乾いた花茎が年を重ねて針金細工のような独特の冠を編み上げる姿に由来する。秋に葉を広げ、日本の夏は葉を落として休眠する 冬型。Tylecodon 属の中でも特に造形的な妙味のある一種で、実生(みしょう)からじっくり育てる愛好家に親しまれている。
育て方
置き場所・日当たり

冬型のため、秋〜春の生育期は屋外の終日日向に出して締まった姿に育てる。日本の真夏は休眠期で葉を落とすため、なるべく涼しく風通しのよい明るい日陰へ移し、雨と高温多湿を避けて夏越しさせる。鉢は地面に直置きせず棚上に上げ、サーキュレーターで風を回す。冬は霜に当てず、5℃ 以上を保てる明るい軒下〜室内窓辺で管理する。
水やり
秋に気温が下がって新葉が動き始めたら再開、生育期は表土が乾いてからたっぷり。初夏に 25℃ を超え葉が黄変したら断水、夏は月 1 回の軽い霧吹き程度に留める。日本の梅雨〜真夏の高温多湿が最大の事故要因。
用土
水はけ最優先で無機質中心に。赤玉土小粒:鹿沼土小粒:軽石 = 3:3:4 と軽石比率を高めて夏の蒸れを徹底的に避ける。鉢底のドレンを十分に取る。
肥料・活力剤
生育期に倍以上に薄めた液肥を月 1 回、または緩効性肥料を植え替え時にごく少量。夏の休眠期は一切与えない。与えすぎると枝先の網目模様が間延びする。
温度・冬越し
生育適温 15〜25℃、最低 5℃。乾いていれば 0℃ 近くまで耐える報告もあるが、室内取り込みが安全。夏越しが最大の関門で、25℃ を超え始めたら水を切り、35℃ を超える熱帯夜は遮光と通風で乗り切る。

実生のはじめ方
種の入手先
海外: Köhres / Mesa Garden / Succseed / Unusual Seeds / Cactus Store
国内 専門店: プラントブラザーズ / SEEDSTOCK / あるびの精肉店 / 奈良多肉植物研究会
国内 マーケット: ヤフオク / メルカリ / Yahoo!ショッピング
播種前の処理
殺菌剤(ベンレート水和剤・ダコニール1000など)と活力剤(メネデール等)を使用希釈率で混ぜた液に、種子を半日程度浸ける。浮かんでくる種は鮮度が落ちている目安。種子は微小で、新鮮なほど発芽率が高い。
用土
実生用は細粒・無菌寄りに。赤玉土細粒:鹿沼土細粒:バーミキュライト = 1:1:1 を熱湯やレンジで事前殺菌。低温で発芽期間が長引く分、衛生は徹底する。
播種方法
覆土なし、または種子が見え隠れする程度のごく薄い覆土に。種子間隔は 1cm 以上空け、密集を避ける。
光・温度
明るい日陰で 15〜22℃ をキープ。日本では 9〜11 月の秋播き が自然なリズムに乗りやすい。加温マットは不要。発芽は 1〜3 週間。
水やり
鉢底 1〜2cm の腰水管理。最初の 2〜3 週間は乾燥させず、発芽が揃ったら徐々に水位を下げる。
肥料
発芽直後は不要。本葉展開後に倍以上に薄めた液肥を月 1〜2 回、生育期に与える。
発芽後〜植え替えまで
発芽〜本葉展開
腰水継続、明るい日陰で管理。
腰水卒業
1〜2 ヶ月かけて段階的に。
初回植え替え
1〜2 年目、根が回ってから秋の生育期入り直前に。
よくある失敗
カビ・立ち枯れ
- 原因: 過湿、雑菌、低温下での腰水長期化
- 予防: 用土殺菌、腰水の水換え、サーキュレーター通気。冬型は乾きにくいので夏型感覚で与え続けない
徒長
- 原因: 光量不足、室内暖房による高温+暗さ
- 予防: LED を近距離、または屋外の明るい日陰へ。暖房の効いた窓辺に長時間置かない
種が発芽しない
- 原因: 鮮度切れ、温度が高すぎる
- 予防: 新鮮な種を秋に播く。夏に播かない
夏の高温で停止・腐敗
- 原因: 夏越しの高温多湿、断水できていない鉢に梅雨〜真夏の蒸れが重なる
- 予防: 6 月頃から水を切り、涼しい明るい日陰へ。雨に絶対当てない。Tylecodon を失う事故の大半はここで起きる
注意点
Tylecodon 属は全種強毒、樹液に bufadienolides 系累積性神経毒(cotyledoside ほか)。家畜中毒 krimpsiekte(縮む病) の原因植物。手袋着用、ペット・子どもから遠ざける。




