聖書時代から「没薬(ミルラ)」の名で香料・薬用として知られてきた樹脂植物。アフリカの角からアラビア半島南部にかけて、ソマリア・エチオピア東部・イエメン・オマーンの石灰質土壌の乾燥斜面と谷に自生し、標高250〜1,300m、年降水量230〜300mmの灼熱の土地で、Vachellia とまばらな樹冠を成す。樹高はおよそ5mに達し、太く節くれた幹、剥がれる銀灰色の樹皮、鋭い棘で覆われた小枝が特徴。傷つけると琥珀色の樹脂が滲み、ナバテアの隊商を経て地中海世界へ運ばれた古典的な没薬を生む。古い樹は野趣ある古木の姿に育ち、ハベシニカと並ぶコミフォラの入門種でもある。
育て方
置き場所・日当たり
アフリカの角の石灰質丘陵で乾季の強光と熱風を浴びて育ち、強光と高温を心底好む。生育期は屋外で終日直射に当て、強光下で幹を太らせる。日本の真夏の猛暑では半日陰でやや遮光し、風通しを最優先する。多湿は属内でも特に苦手なので、軒下管理で雨ざらしを徹底的に避けたい。冬は最低気温が8℃を下回る前に明るい室内窓辺へ取り込む。剪定後の傷口からは琥珀色の樹脂が滲み、芳香を放つことがある。
水やり
生育期は表土がしっかり乾いてから鉢底から流れるまでたっぷり与え、与えた後は風で素早く乾かす。冬の休眠期は完全断水。
用土
水はけ最優先の無機質配合で、赤玉土:鹿沼土:軽石 = 4:3:3が基本。石灰質生育地に倣い、軽石比率を高めて深鉢で乾湿のメリハリを付ける。
肥料・活力剤
生育期に薄めた液肥を月1回程度。窒素過多は棘の発達と幹の充実を妨げるため、リン酸主体で控えめに与える。
温度・冬越し
生育適温22〜35℃で属内でも高温寄り。最低8℃が目安、5℃以下では幹に黒シミや軟腐が出やすい。冬は完全断水で明るい暖かい室内に置き、冷え込む夜は窓際から離す。

実生のはじめ方
種の入手先
海外: Köhres / Mesa Garden / Succseed / Unusual Seeds / Cactus Store
国内 専門店: プラントブラザーズ / SEEDSTOCK / あるびの精肉店 / 奈良多肉植物研究会
国内 マーケット: ヤフオク / メルカリ / Yahoo!ショッピング
播種前の処理
殺菌剤(ベンレート水和剤・ダコニール1000など)と活力剤(メネデール等)を使用希釈率で混ぜた液に、種子を7時間程度浸ける。鮮度が発芽率を大きく左右し、古い種子は中身が空のこともあるため、新鮮な種を入手後すぐに播くのが基本。
用土
実生用は細粒・無菌寄りに組み直す。赤玉土細粒:日向土細粒を1:1で配合し、播種前に熱湯または電子レンジで殺菌する。
播種方法
表面を平らに均し、種を横向きに置く。覆土はごく薄く、種子がうっすら見える程度に留める。塊根性なので深植えは禁物。
光・温度
明るい日陰で直射は避け、温度は25〜32℃を保つ。発芽日数7〜21日。発芽率は鮮度次第で大きく変動するが、新鮮な種なら発芽はおおむね安定する。加温マットで温度を安定させる。
水やり
発芽までは腰水で常時湿潤を保ち、発芽が揃ったら浅めの腰水に切り替える。
肥料
本葉が2〜3枚展開してから、規定の半分以下に薄めた液肥を月1回。濃度過多は細根を傷める。
発芽後〜植え替えまで
発芽〜本葉展開
腰水継続、湿度を保つ。
腰水卒業
1〜2ヶ月かけて段階的に。
初回植え替え
1〜2年目、根が回ってから。
よくある失敗
カビ・立ち枯れ
- 原因: 過湿、雑菌、雨ざらし
- 予防: 用土殺菌、通気確保、軒下管理
徒長
- 原因: 光量不足、肥料の与えすぎ
- 予防: 生育期は終日直射、窒素肥料は控えめに
種が発芽しない
- 原因: 種の鮮度切れ、温度不足
- 予防: 新鮮な種を選ぶ、加温マットで温度を安定させる
注意点
鋭い棘があるので扱いに注意。樹液に弱い毒性がある。5℃以下で軟腐が出やすい。





