ナミビア南部カラス州、リューデリッツ近郊から南ナミブの霧帯にかけて自生し、南アフリカ北ケープ州オレンジ川南岸まで南北約 300km の細長い分布を持つ小型の塊茎性ペラルゴニウム。短く太く膨らむ濃褐色の幹から指状の枝が密に分岐し、灰銀色のうぶ毛をまとう小さな扇状葉と白〜淡桃の小花を秋〜春に展開、夏は落葉して休眠する 冬型。Kew POWO は L'Héritier (1789) の P. crassicaule を accepted name とし、本サイトもこれを採用する(Dinter (1920) の P. mirabile は nom. illeg. と判定される無効学名)。種子・株は今も流通名 mirabile で広く取り扱われる。日本では「花林糖(かりんとう)」の愛称でも親しまれる、コレクター好みの基本種。
育て方
置き場所・日当たり
原産地は年降水量 100mm 未満、ベンゲラ寒流由来の海霧で潤う冷涼な南ナミブの石英・花崗片麻岩・砂岩の岩盤の隙間で、強い日射と涼しい大気に晒されて育つ。生育期の秋〜春は屋外または明るい窓辺でしっかり光を当てると、枝が間延びせず濃褐色の樹皮と銀毛を保つ。日本で最も危険なのは 梅雨明け以降の夏。直射を避けた明るい日陰(寒冷紗 50〜70%)に移し、棚上に置いてサーキュレーターで風を切る。冬は屋内 5℃ 以上の窓辺で容易に越冬。
水やり
9〜10 月から少量で再開、葉が展開したら乾いてからたっぷり。5〜6 月に葉が黄変・落葉したら断水、夏は完全に乾かす。心配して夏に与えるのが腐敗の最大原因。
用土
水はけ最優先で無機質中心に。赤玉土小粒:鹿沼土小粒:軽石 = 3:3:4 と軽石比率を上げる。原産地は岩の浅い割れ目なので、深鉢より浅めの鉢で表層からしっかり乾く構造が合う。
肥料・活力剤
生育期に倍以上に薄めた液肥を月 1 回、または緩効性肥料を植え替え時に少量。極度の貧栄養土壌の出身で、与えすぎは枝が間延びし樹皮の色が鈍る。夏は与えない。
温度・冬越し
生育適温 15〜25℃、最低 5℃。乾いていれば 0℃ 近くまで耐えるが湿土+低温は致命傷。夏越しが冬越しより難しい 種で、35℃ 超+湿気で株元から崩れる。夏は遮光・通風・断水を徹底。

実生のはじめ方
種の入手先
海外: Köhres / Mesa Garden / Succseed / Unusual Seeds / Cactus Store
国内 専門店: プラントブラザーズ / SEEDSTOCK / あるびの精肉店 / 奈良多肉植物研究会
国内 マーケット: ヤフオク / メルカリ / Yahoo!ショッピング
播種前の処理
殺菌剤(ベンレート水和剤・ダコニール1000など)と活力剤(メネデール等)を使用希釈率で混ぜた液に、種子を半日程度浸ける。沈まないものは充実度が下がっている可能性が高い。種子は嘴状の先端を持つ典型的な Geraniaceae 型で、鮮度低下で発芽率が落ちる。
用土
実生用は細粒・無菌寄りに。赤玉土細粒:鹿沼土細粒:バーミキュライト = 1:1:1 を熱湯やレンジで殺菌。SANBI は近縁 crassicaule で「湿った用土を 15〜21℃ に保つと立ち枯れを抑えられる」と記す。
播種方法
ごく薄く覆土するか、覆土なしで湿らせた用土表面に置く。種子間隔を 1cm 以上空け、密集を避ける。
光・温度
明るい日陰で 15〜22℃ をキープ。冬型なので 25℃ を超える加温はかえって発芽率を落とす。日本では 9〜11 月 が適期。発芽は 1〜4 週間で揃い、暖かければ 1 週間ほどで動き始める例も。
水やり
鉢底 1〜2cm の腰水管理。最初の 2〜3 週間は乾かさず、発芽が揃ったら段階的に水位を下げる。冷たすぎる水は避け室温程度を使う。
肥料
発芽直後は不要。本葉展開後に倍以上に薄めた液肥を月 1〜2 回。成長は緩やかで、初年度は数 mm〜1cm。焦らず数年かけて塊茎を太らせる。
発芽後〜植え替えまで
発芽〜本葉展開
腰水継続、明るい日陰で。
腰水卒業
1〜2 ヶ月かけて段階的に。
初回植え替え
2〜3 年目、秋に浅鉢へ。
よくある失敗
カビ・立ち枯れ
- 原因: 過湿、雑菌、通気不足
- 予防: 用土殺菌、腰水の水換え、サーキュレーターで通気確保
徒長
- 原因: 光量不足。冬型は秋〜春の太陽が低く光量を稼ぎにくい
- 予防: 室内なら LED を近距離、晴天時は屋外の明るい日陰へ
種が発芽しない
- 原因: 鮮度切れ、温度が高すぎる
- 予防: 入手後は早めに播く。25℃ を超える加温は避け、室温 15〜22℃ で
夏の高温で停止・腐敗
- 原因: 休眠中の高温多湿、夏の水やり。本種最大の事故要因
- 予防: 5〜6 月から水を切り梅雨入り前に断水、夏は遮光・通風・涼所、エアコン室退避も有効
注意点
CITES 非掲載だが、原産地では Near Threatened(ナミビア)。実生・栽培株を選びたい。



