南アフリカ北西ケープ州のナマクアランドからヴァンリンスドープ周辺、さらにナミビア南西部にかけて、石英礫が薄く散る緩斜面や平原に分布する小型のチレコドン。1912 年に Schönland が Cotyledon pearsonii として記載し、1978 年に Tölken が Tylecodon 属を立てた際に移された種で、種小名は採集者 H. H. W. Pearson に由来する。塊根状にふくらんだ基部から数本の短枝が立ち上がり、全体で 30cm 前後、太い株では基部直径が 12cm に達することもある。葉は冷涼な秋〜春の生育期に展開し、初夏に淡褐色の管状花を疎らな円錐花序にともす 冬型。自生地では局所的にまとまって見られる地味な存在で、栽培でも夏越しの管理さえ押さえれば比較的扱いやすい部類。
育て方
置き場所・日当たり

原産地のナマクアランド〜ヴァンリンスドープ一帯は冬雨地帯で、年降水量は内陸側で 100〜200mm 程度、夏は乾いて冷涼な海風が吹き抜ける。自生地では石英礫に覆われた緩斜面で日射をまともに受けながら、地中の塊根部だけが熱から守られている。生育期の秋〜春は屋外または明るい窓辺でしっかり光を当てて、節間の詰まった姿を保つ。日本の 夏が最大の鬼門 で、梅雨明け以降は遮光 30〜50% と通風の良い場所へ。鉢を棚上に上げてサーキュレーターで風を送れば一段安全になる。
水やり
涼しくなる 9〜10 月に少量から再開、葉が展開してきたら乾いてからたっぷり与え、春先まで生育期の水やりを続ける。4〜5 月に葉が黄変・落葉したら徐々に減らし、夏は原則断水。落葉して枝だけの姿が正常で、心配して与えるとそのまま株元から腐る。
用土
水はけ最優先で無機質中心に。赤玉土小粒:鹿沼土小粒:軽石 = 3:3:4 と軽石比率を高めて乾きやすく仕上げる。塊根が浅く広がる種なので、深鉢より通気の良い浅めの鉢が合う。
肥料・活力剤
生育期に倍以上に薄めた液肥を月 1 回、または植え替え時に緩効性肥料をひとつまみ。自生地は極度の貧栄養土壌で、与えすぎは枝が間延びして本来の締まった姿が崩れる。夏の休眠期は与えない。
温度・冬越し
生育適温は 15〜25℃ と夏型より明らかに低い。最低 5℃ を目安にし、湿った用土+低温は致命傷になる。夏越しが冬越しより難しい のが冬型共通で、35℃ を超える熱帯夜と残った湿気が重なれば一気に株元から崩れる。夏は遮光・通風・断水を徹底し、エアコンの効いた室内退避も実用的。

実生のはじめ方
種の入手先
海外: Köhres / Mesa Garden / Succseed / Unusual Seeds / Cactus Store
国内 専門店: プラントブラザーズ / SEEDSTOCK / あるびの精肉店 / 奈良多肉植物研究会
国内 マーケット: ヤフオク / メルカリ / Yahoo!ショッピング
播種前の処理
殺菌剤(ベンレート水和剤・ダコニール1000など)と活力剤(メネデール等)を使用希釈率で混ぜた液に、種子を半日程度浸ける。種子は微小な淡褐色で、鮮度低下で発芽率が落ちやすい。入手後はなるべく早く播きたい。
用土
実生用は細粒・無菌寄りに。赤玉土細粒:鹿沼土細粒:バーミキュライト = 1:1:1 を熱湯やレンジで事前殺菌。表層に粗砂を薄く敷くと微小種子が安定する。
播種方法
覆土しない。湿らせた用土表面にそのまま振りまく。極小なので風で飛ばないよう、屋内の風のない場所で作業する。種子間隔 5mm〜1cm を目安に。
光・温度
明るい日陰で 15〜22℃ をキープ。冬型なので 25〜30℃ の加温は不要で、かえって発芽が乱れる。日本では 9〜11 月の秋播きが基本。発芽率は鮮度次第で大きく変動するが、新鮮な種なら発芽はおおむね安定する。
水やり
鉢底 1〜2cm の腰水で表面を乾かさない。最初の 2〜3 週間はしっかり湿度を保ち、発芽が揃ったら段階的に水位を下げる。冷たすぎる水は避け、室温程度を使う。
肥料
発芽直後は不要。本葉展開後に倍以上に薄めた液肥を月 1〜2 回。初年度は数 mm〜1cm 程度しか伸びないので焦らない。
発芽後〜植え替えまで
発芽〜本葉展開
腰水継続、明るい日陰で管理。
腰水卒業
1〜2 ヶ月かけて段階的に。
初回植え替え
1〜2 年目、秋に浅鉢へ。
よくある失敗
カビ・立ち枯れ
- 原因: 過湿、雑菌、通気不足
- 予防: 用土殺菌、腰水の水換え、サーキュレーターで通気確保
徒長
- 原因: 光量不足。冬型は秋〜春の太陽高度が低く光量を稼ぎにくい
- 予防: 室内なら LED を近距離、晴天時は屋外の明るい日陰へ
種が発芽しない
- 原因: 鮮度切れ、温度が高すぎる
- 予防: 新鮮な種を 15〜22℃ で播く。夏播きは避け、秋以降に
夏の高温で停止・腐敗
- 原因: 休眠期の夏に水を与える、風通しの悪い高温多湿な場所に置く
- 予防: 春の終わりに葉が黄変したら断水、夏は遮光と通風を最優先。エアコンの効いた室内退避も有効
注意点
チレコドン属は全種、樹液に bufadienolides 系強心配糖体を含む。手袋を使い、家畜・ペット・子どもから遠ざける。




