南アフリカからナミビア南部の冬雨地帯(スクレント・カルー)に自生する、チレコドン属最大の樹木状多肉。和名「阿房宮」、原産地ではアフリカーンス語で Botterboom(バターの木)と呼ばれる。命名権威は (L.f.) Tölken、1978 年に Cotyledon 属から分離して新属 Tylecodon を立てた際の代表種。高さ 2m に達する幹に黄緑〜マスタード色の薄紙状樹皮が剥がれる姿が特徴で、秋〜春に葉を展開し、初夏に橙赤の管状花を穂状に咲かせて夏は完全に落葉休眠する 冬型。日本の蒸し暑い夏をいかに涼しく乾かして越すかが最大の難所。
育て方
置き場所・日当たり

原産地スクレント・カルーは年降水量 100〜200mm の冬雨地帯で、岩の隙間や砂礫地で強い日射を浴びて育つ。生育期の秋〜春は屋外でしっかり日に当てると葉が締まり樹形が間延びしない。問題は 夏の休眠期 で、置き場所選びの主役は「いかに涼しく風を通すか」。直射を避けた明るい日陰(北側軒下や寒冷紗 50〜70%)に移し、鉢を棚上に上げてサーキュレーターで風を回す。冬は屋内の 5℃ 以上を保てる明るい窓辺で越冬。
水やり
秋(9〜10月)に最低気温が 20℃ を下回り始めたら少量から再開、葉が展開したら本格的に与える。生育期は乾いてからたっぷり。春の終わりに葉が黄変・落葉したら断水、初秋までは原則水を切る。「乾いて見えるから」と夏に与えるのが腐敗の最大原因。
用土
水はけ最優先で無機質中心に。赤玉土小粒:鹿沼土小粒:軽石 = 3:3:4 と軽石比率を高めて通気と乾きを稼ぐ。SANBI は「サイズの割に浅く弱い根」と記し、深鉢にこだわらず通気の良い浅めの鉢でも可。
肥料・活力剤
生育期の秋〜春に倍以上に薄めた液肥を月 1 回、または緩効性肥料を植え替え時に少量。本来ゆっくり太る木で、与えすぎは枝が間延びし樹皮の色も鈍る。
温度・冬越し
生育適温 15〜25℃、35℃ を超えると休眠へ。最低 5℃ を目安に、湿土+低温は致命傷。夏越しが冬越しより難しい のが本種の特徴で、6〜9月は遮光・通風・断水を徹底し、エアコンの効いた室内退避も有効。

実生のはじめ方
種の入手先
海外: Köhres / Mesa Garden / Succseed / Unusual Seeds / Cactus Store
国内 専門店: プラントブラザーズ / SEEDSTOCK / あるびの精肉店 / 奈良多肉植物研究会
国内 マーケット: ヤフオク / メルカリ / Yahoo!ショッピング
播種前の処理
殺菌剤(ベンレート水和剤・ダコニール1000など)と活力剤(メネデール等)を使用希釈率で混ぜた液に、種子を半日程度浸ける。水面に残るものは鮮度切れの目印になる。種子は非常に細かい淡褐色で、鮮度低下で発芽率が一気に落ちる。
用土
実生用は細粒・無菌寄りに。赤玉土細粒:鹿沼土細粒:バーミキュライト = 1:1:1 を熱湯やレンジで事前殺菌。SANBI の推奨どおり表面に粗砂を薄く敷くと固定と通気を両立できる。
播種方法
覆土しない。極めて細かいので風で飛ばないよう注意し、湿らせた用土表面にそのまま振りまく。密集したら発芽後に間引く。
光・温度
明るい日陰で 15〜22℃ を保つ。冬型なので 25〜30℃ で加温すると発芽が乱れる。日本では 9〜11 月の秋播きが基本。発芽は 1〜3 週間。
水やり
鉢底 1〜2cm の腰水で表面を乾かさない。極小種子は上からの灌水で流されるので必ず腰水か霧吹き。発芽が揃ったら段階的に水位を下げる。
肥料
発芽直後は不要。本葉展開後に規定の 2 倍以上に薄めた液肥を月 1〜2 回。SANBI 記録で「2 年で 2〜3cm」と非常にゆっくり育つので焦らない。
発芽後〜植え替えまで
発芽〜本葉展開
腰水継続、明るい日陰で管理。
腰水卒業
1〜2 ヶ月かけて段階的に。
初回植え替え
1〜2 年目、根が回ってから秋に。
よくある失敗
カビ・立ち枯れ
- 原因: 過湿、雑菌、通気不足
- 予防: 用土殺菌、腰水の水換え、サーキュレーターで通気確保
徒長
- 原因: 光量不足。冬型は秋〜春の太陽が低く光量を稼ぎにくい
- 予防: 室内なら LED を近距離、晴天時は屋外の明るい日陰へ
種が発芽しない
- 原因: 鮮度切れ、温度が高すぎる
- 予防: 新鮮な種を室温(15〜22℃)で播く。25〜30℃ の加温マットはかえって発芽率を落とす
夏の高温で停止・腐敗
- 原因: 休眠期の夏に水を与える、風通しの悪い高温多湿な場所に置く
- 予防: 春の終わりに葉が黄変したら断水、夏は遮光と通風を最優先。エアコンの効いた室内退避も有効
注意点
チレコドン属は全種強毒、樹液に bufadienolides 系強心配糖体(cotyledoside)。家畜中毒 krimpsiekte(縮む病) の原因植物。手袋着用、家畜・ペット・子どもから遠ざける。



