南アフリカ西ケープ州、大西洋沿岸のパーペンドープ(Papendorp)近郊にだけ知られる小型の塊根性灌木。命名は de Candolle、1838 年の Prodromus 第 6 巻 478 頁に記載された古い種で、種小名は「大きな種子」を意味し、属内では比較的大きな赤褐色の有毛痩果を結ぶことに由来する。ボトル状にふくらんだ幹からごく細い枝を伸ばし、表面はデコボコと硬いロウ質の表皮に覆われる。秋〜春の生育期に淡いエメラルドグリーンの葉と小さな黄色い頭花を出し、夏には葉を落として休眠する 冬型。成熟しても高さ 30〜40cm の小品で、SANBI Red List では Data Deficient – Taxonomically Problematic(情報不足・分類学的検討要)と評価され、野生での記録は限られた局所個体群のみ。日本でも実生(みしょう)由来の種子と苗が少量流通する、オトンナ属の中でもややマニアックな存在。
育て方
置き場所・日当たり

自生地のパーペンドープ周辺は大西洋に面した冬雨地帯で、沖合の冷たいベンゲラ海流が運ぶ霧と冬季の降雨が水分の主な供給源になる。砂丘や砂質の丘陵、海岸寄りの岩盤に張り付くように生え、強い日差しと乾風にさらされる一方で、夏は霧と海風で地表近くの湿度が保たれる環境だ。生育期の秋〜春は屋外でしっかり日に当てて葉と幹を締めると、ボトル状の幹のシルエットが崩れにくい。冬の弱い日差しは最大限取り込みたいが、強い直射に固執する必要はない。夏の休眠期は遮光と通風が最優先で、直射を外した明るい日陰(北側軒下や寒冷紗 50〜70%)に移し、サーキュレーターで常に空気を動かす。冬は屋内 5℃ 以上の明るい窓辺で越冬。
水やり
秋(9〜10月)に最低気温が 20℃ を下回り葉が動き出したら少量から再開、生育期は 2 週間に 1 回ほどたっぷりと与える。春に葉が黄変・落葉したら断水、夏は完全に乾かす。夏に与えるのが腐敗の最大原因。
用土
水はけ最優先で無機質中心。赤玉土小粒:鹿沼土小粒:軽石 = 3:3:4 と軽石比率を高めて乾きを稼ぐ。自生地が砂質であることを意識し、表土に粗砂を敷くと幹際の蒸れを抑えやすい。
肥料・活力剤
生育期の秋〜春に倍以上に薄めた液肥を月 1 回、または緩効性肥料を植え替え時に少量。本来ゆっくり育つ種で、与えすぎは幹のしまりを鈍らせる。
温度・冬越し
生育適温 15〜25℃、最低 5℃ が目安。30℃ を超え始めると休眠へ入る。湿土+低温は致命傷で、夏の高温多湿は 冬越しより難しい。6〜9月は遮光・通風・断水を徹底する。

実生のはじめ方
種の入手先
海外: Köhres / Mesa Garden / Succseed / Unusual Seeds / Cactus Store
国内 専門店: プラントブラザーズ / SEEDSTOCK / あるびの精肉店 / 奈良多肉植物研究会
国内 マーケット: ヤフオク / メルカリ / Yahoo!ショッピング
播種前の処理
殺菌剤(ベンレート水和剤・ダコニール1000など)と活力剤(メネデール等)を使用希釈率で混ぜた液に、種子を半日程度浸ける。沈まない種は鮮度切れの傾向が強い。赤褐色の有毛痩果は比較的大きいが綿毛つきで風で飛びやすいので、湿らせた表土に丁寧に置く。
用土
実生用は細粒・無菌寄りに。赤玉土細粒:鹿沼土細粒:バーミキュライト = 1:1:1 を熱湯やレンジで事前殺菌。表面に細かい川砂を薄く敷くと種子の固定と通気を両立できる。
播種方法
覆土しないか、種子が見え隠れする程度のごく薄い覆土。痩果は属内では大きい部類だが、それでも綿毛が風を受けやすいので湿らせた用土表面に押し付けるように置く。
光・温度
明るい日陰で 15〜22℃ を保つ。冬型なので 25〜30℃ で加温すると発芽が乱れる。日本では 9〜11 月の秋播きが基本。発芽は 10〜30 日、続いて 1〜2 か月にわたって不揃いに続く。発芽率は鮮度次第で大きく変動するが、新鮮な種なら発芽はおおむね安定する。
水やり
鉢底 1〜2cm の腰水。最初の 2〜3 週間は乾かさず、発芽が揃ってきたら段階的に水位を下げる。
肥料
発芽直後は不要。本葉展開後に規定の倍以上に薄めた液肥を月 1〜2 回、ごく控えめに。
発芽後〜植え替えまで
発芽〜本葉展開
腰水継続、明るい日陰で。
腰水卒業
1〜2 か月かけて段階的に。
初回植え替え
1〜2 年目、根が回ってから秋に。
よくある失敗
カビ・立ち枯れ
- 原因: 過湿、雑菌、通気不足
- 予防: 用土殺菌、腰水の水換え、サーキュレーターで通気を確保
徒長
- 原因: 光量不足。冬型は秋〜春の太陽が低く光量を稼ぎにくい
- 予防: 室内なら LED を近距離、晴天時は屋外の明るい日陰へ移す
種が発芽しない
- 原因: 鮮度切れ、温度が高すぎる
- 予防: 新鮮な種を 15〜22℃ で播く。25〜30℃ の加温マットはかえって発芽を抑制する
夏の高温で停止・腐敗
- 原因: 休眠期の夏に水を与える、風通しの悪い高温多湿の場所に置く
- 予防: 春に葉が黄変したら断水、夏は遮光と通風を最優先。エアコンの効いた室内退避も有効
注意点
SANBI Red List で Data Deficient – Taxonomically Problematic とされ、野生での個体数把握が進んでいない種。流通量も限られるため、入手は実生由来を中心とする正規ルートから。




